まるでその淡い花びらの色のように 儚く消えませんように…




TRUE OF MY HEART




「ほら、クルガンあれ見ろよ!」
そう言って青年は赤い髪を夜の風になびかせるのと同じように声を弾ませ、
前方にある、薄い色の美しい花を枝に咲かせた木々を指さした。
「今年も綺麗に咲いたよなぁ…」
赤髪の青年はしばし時を忘れたかのように美しい花に見とれていた。
「まったく…ガキのようなヤツだな、お前は。」
赤髪の青年の後ろから来た銀髪の男−−クルガンは、少し冷めたような声で言う。
それを聞いて赤い髪の青年は、二十代も中程はいっているのであろうに、
その年齢に似合わない無邪気な表情の顔を木から目を放すとクルガンを軽く睨んだ。
「お前ってさぁ…フツーそういうコト言うか?『感動』っていうモンがわかんねぇのかよ?」
「感動くらいはするさ…お前のようにスキップしながらはしゃぐような大人気ないことはしないがな、シード?」
バカにするように鼻で嘲笑うとクルガンはシードの深紅の髪をポンと叩いて木に近付いていった。
少々身長差があるということで子供にするかのように頭を叩かれ、本気でムッとしたように顔を顰める。
が、しかし、花を…桜の木を綺麗だとはしゃいだ自分をバカにしながらも、
木をよく見るために近付いていくクルガンを小走りで追って行った。

「な?綺麗に咲いてるだろ?」
目を細め、桜を見ているクルガンに、さも自分のことのように嬉しそうにシードが言い、
自分もまたクルガンの隣で綺麗に咲き誇る桜に見とれていた。
そのシードをちらりと横目で見るとクルガンはフ、と微笑する。
「そうだな…あの頃と、この木だけは少しも変わっていないな。」
「あの頃…って?」
シードの質問にクルガンが黙っているので、シードは少し訝し気に眉をひそめた。
「なんだよ…お前、オレに何か隠してんのか?!」
「いや…お前に覚えがないならそれでも良いさ。」
咄嗟に飛び掛かろうとするシードをさらりと受け流し、桜を見つめたままクルガンが言う。
「なんだよ、それ…オレに関係してるコトか?」
「まぁな…覚えてないんだろう?ならいい。」
あくまで『あの頃』については語ろうとはしないクルガンに不満を抱きつつも、
今はクルガンにかなわないことがわかったらしく、シードはクルガンの隣で大人しく花見をすることにしたようだ。
ライトアップされたわけでもないのに、僅かな月の光だけを受け、白く輝く桜の花びらに二人はしばし見とれていた。
「こんな酷い戦渦の中にあっても…この桜だけはいつまでも消えたりしないよな…。」
桜の花が反射させた、月の白い光を整ったその顔に受け、何かを想うように目を細めて
ふと、小さな声で呟いたシードの一言を聞き漏らさなかったクルガンは、
また先ほどの微笑を、今度はシードに見つからないように頬に浮かべる。

シードの想いは、昔と変わっていることなんてない。

そう思うとクルガンは少し嬉しくなった。
クルガンは一つ深呼吸し、隣にいる相棒の頭に手を置くと、くしゃりと髪を撫でた。
「こういう美しい場所…お前が失いたくないものの為に、戦っているんだろう?」
クルガンの手を頭に乗せたまま、シードは少し驚いたような顔をしてクルガンを見上げた。
そして、嬉しそうに目を細めて答えた。
「当たり前だ。オレはオレの好きなもの…失いたくないもののために戦っている。
大事なものの為に戦っている、それが誇りなんだ。」
シードらしく答えられた言葉に、クルガンは微笑んだ。
「そうだな…やはりお前はあの頃のままだった…その方がお前らしい。」
「だから…あの頃って何だよ?」
また、クルガンの言葉が解らないシードは眉を顰めたが、クルガンはその答えは言わず、
月の光の元で咲き誇る美しい桜の木々を見つめていた−−−






あまりに古くてお恥ずかしいですけど晒し上げその2。
クルガンがやたら優しげなのがおかしいです。(笑)

多分01年とか02年とかいう日付けな話…(白目)